欧州発「持続可能な資源検証」の影響

2015年に始まったSDGs(持続可能な開発目標)は今年、2030年までの行動計画期間の半分を超えました。大企業や官公庁に伺うと、「SDGsピンバッジ」を付けている方が多く、浸透しているようです。

一方、サステナブルな事業を進めるにあたり、自社の製品やサービスのサステナビリティを客観的に評価していくことが重要になります。その一つの方法として、サステナビリティに関する認証の取得があります。
弊オフィスに最近ご相談が増えているものはISCC Plusの認証取得です。

2009年に施行された欧州の再生可能エネルギー指令(Renewable Energy Directive (RED) : 2009/28/EC)では、持続可能で気候に優しいバイオ燃料とバイオ液体の生産に関する規制を定めています。この指令の施行後、生産者、加工業者、消費者による広範なサプライチェーンが世界中に構築され、ネットワーク化されました。そして、サプライチェーン全体の認証を担保するため、REDcertやISCCといったRED要求事項への準拠を評価・認証する制度が構築されています。
<REDcert>
欧州全体で適用される品質認証スキームとして策定。特に、持続可能な生産基準、管理基準、トレーサビリティ文書の評価、および温室効果ガス削減計算の評価に対応。
<ISCC>
International Sustainability & Carbon Certification(持続可能性カーボン認証)の頭文字であり、バイオマス、バイオエネルギーの認証制度。対象地域がEUだけのISCC EUと、対象がEU地域以外も取得可能なISCC PLUSの2種類があります。

このような認証制度は他にもあります。製造業に関連するものの代表例は以下の通りです。

  • GRS:Global Recycled Standard(GRS認証)
  • RCS:Recycled Claim Standard(RCS認証)
  • SCA:Sub-Committee Accreditation(認定小委員会)
  • SBP:Sustainable Biomass Program(持続可能なバイオマスプログラム)
  • RSB:Round Table for Sustainable Biomass(持続可能なバイオ燃料のための円卓会議)
  • GGL:Green Gold Label(GGL 認証)

これらの認証制度ですが、自社のサステナビリティを証明するものという位置づけのほかに、サプライチェーンを統廃合させるような動きも垣間見えます。ISO9001の黎明期に「ISOを取らないと取引ができなくなる」と言われたように、顧客から「当社との取引を継続したいなら、サステナブル認証をとりなさい」という要求も出ているようです。

現在、最も川上の石油化学産業と、ブランドオーナー(エンドユーザー)に部品や材料、包装材、容器などを卸している商社などがサステナブル認証取得を進めています。そして、サステナブル認証はサプライチェーン全体が取得しないと意味合いが薄れることから、この動きは次第に川中に波及すると考えられます。

日本の場合、川中を構成しているのは主に中小企業となります。
大企業が史上最高益をたたき出している反面、中小企業は原料や光熱費、人件費の上昇を製品の価格に転嫁できず、収益性が悪化しているところが多くなっています。そのような状況で、中小企業としては顧客との取引を継続するために、体制づくりと審査に費用をかけてサステナブル認証をとるかどうか難しい経営判断を迫られそうです。

例えばISCC認証の場合、川上企業と川下企業のISCC認証取得はあと2~3年で峠を越しそうであり、その後は川中企業に対する認証取得の圧力が強まってくると予想されます。
自社へのサステナブル認証要求の状況などについて、供給者や顧客、商社などから情報を得ながら、体制面や資金面の準備を少しずつ進めていくことをお勧めします。

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