先日、某化学系企業様にて「ヒューマンエラーの原因分析と防止対策」という研修をさせていただきました。
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不適合の原因と是正措置
私はISOマネジメントシステムの構築や維持を長く経験しています。この中で、不適合の発生要因の一つにヒューマンエラーがあります。
※ 不適合とは、工程異常や検査不合格、苦情などだと思ってください。
そして、不適合に対する是正措置報告では、対策として以下のようなものがよく見られます。
- 本人に二度と同じミスをしないように指導。
- 朝会でメンバーに事例を紹介し、注意喚起。
- マニュアルを改訂してメンバー教育。
時には、人事に手を付ける対策事例もありました。
- ミスを起こした本人を当該作業の担当から外した。
- 本人を解雇した。これにより再発することはない。
(ちなみに、この会社は1月後にクレームを再発したため、次は常務が解任されました)
ヒューマンエラーの防止
人のミスはゼロにできない
いかがですか?これらは、ヒューマンエラーに対する再発防止として適切と思いますか?
例えばD. ノーマンは、エラーのタイプには以下の3つがあるとしています。
スリップ | 行動が意図通りでない(うっかり、しくじり) |
ラプス | 記憶の機能不全(手抜かり、ど忘れ) |
ミステイク | 意図・計画が適切でない(計画の誤り) |
これだけでも、対策は異なってきます。加えて、なぜ“うっかり”したのか、なぜ“ど忘れ”したのか、などを考え始めると、脳科学や認知科学の沼にはまってしまいそうです。
しかし、人のミスをゼロにするというのは、非常にハードルが高いとわかります。
問題を顕現化させない仕組み
また、J. リーズンは、人のエラーが直に問題として顕在化するのではないとしています。多くの防止策の穴を不運(?) にもかいくぐって、事故やトラブルが発生するのです。(スイスチーズモデルと言われています)
全くミスをしない人間はいない中で、ヒューマンエラーの防止策は以下に大別されると考えます。
- ミスを未然に防ぐ
- ミスに気づき、リカバーする
- 次工程以降でミスを発見する
このことから、ヒューマンエラー対策には、人だけでなく、適切な防止策とマネジメントシステムの構築が必要と思われます。
特効薬はない
「ヒューマンエラーに特効薬はないのか?」と思われるかもしれません。私は特効薬はないと考えます。
エラーが顕在化したら原因を分析し、その結果を防止策の設置、メンバーへの啓蒙・指導、仕組み化などにつなげるような、地道な活動を続ける必要があります。
そして、このような地道な活動にはトップの関与が不可欠です。実際、ISO 45001 (労働安全衛生マネジメントシステム)では、トップマネジメントがリーダーシップを発揮し、企業の労働安全衛生文化を醸成していくことなどに対するコミットメントが求められています。
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