化学物質規制の方向性が変わります

『職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会』の報告書(令和3年7月19日公表)を受けて、化学物質規制の考え方が大きく変わろうとしています。
限られた特定の物質や作業に対する規制を遵守する「法令準拠型」から、事業者自らが化学物質の危険有害性を調べ、作業者がケガや病気にならないような対策も自ら選択する「自主管理型」へ転換するというものです。

厚生労働省の発表によると、方向性転換の背景には、労働災害と規制とのいたちごっこがあるようです。これまで使っていた物質が特化則や有機則などで措置義務対象に追加されると、措置義務を忌避して危険性・有害性の確認・評価を十分にせずに規制対象外の物質に変更し、対策不十分により労働災害が発生します。そして労働災害が発生すると当該化学物質が規制されるのです。
また、化学物質による休業4日以上の労働災害の約8割は、具体的な措置義務のかかる123物質以外の物質により発生しているとのことから、現在の規制では労働災害の発生を防げていません。そこで特定の化学物質に対する個別具体的な規制から、危険性・有害性が確認された全ての物質に対して、国が定める管理基準の達成を求め、達成のための手段は指定しない(事業者の自律的な管理に委ねる)方式に大きく転換しようとしているのです。

新たな仕組みのポイントは以下の通りです。

  • 国によるGHS分類で危険性・有害性が確認された全ての物質に、以下の事項を義務づけ
    • 危険性・有害性の情報の伝達
  • リスクアセスメントの実施
    • 労働者が吸入する濃度を国が定める管理基準以下に管理
    • 保護眼鏡、保護手袋等の使用
  • 労働災害が多発し、自律的な管理が困難な物質や特定の作業の禁止・許可制を導入
  • 特化則、有機則で規制されている物質(123物質)の管理は、5年後を目途に自律的な管理に移行できる環境を整えた上で、個別具体的な規制(特化則、有機則等)は廃止することを想定

国によるGHS分類は、今後数年をかけて約2,900物質まで増える予定であり、措置義務対象の化学物質が大幅に増える一方、国が定めた管理基準を達成する手段は、有害性情報に基づくリスクアセスメントにより事業者が自ら選択することになります。

これらの変更を踏まえた労働安全衛生規則等の改正が令和4年5月31日に公布され、令和5年4月1日、令和6年4月1日に順次施行されます。

新たに追加される措置義務対象化学物質を製造あるいは使用している事業者の方、溶剤や薬剤を使用している社員の健康を守りたいと考えている経営者の方、今回の法改正を機に自社の化学物質管理体制を構築/見直しをしてみませんか?

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