セミナーのオンライン化で起こったこと(その2)

前回は、講義を提供する側に起こったことをお伝えしました。
そこで今回は、講義・授業を受ける側に起こったことをお話ししようと思います。

コロナ禍が長引く中、オンラインセミナーも回数を重ねることで、そのメリットが知られてきます。例えば、PCとネットワーク環境があれば教室に行かなくても受講できることから、在宅勤務中でも受講できます。また移動時間がかからないことから、業務時間を削らずに済みます。

良いことばかりのようですが、そのことが次のマイナスの影響を引き起こしているように感じています。

私の体験した例をいくつかご紹介します。

<ケース1>
とある大学でオンライン講義に登壇したのですが、出席している学生は全員カメラオフ&マイクミュートでした。
プライバシーに配慮して生徒のカメラはオフ、またハウリングや雑音が入る可能性があるので発言時以外はマイクをミュートにしておくことは珍しいことではありません。講師側が生徒の反応がわからないので苦慮する程度でしょうか。
ところが、講義の途中で学生に発言を求めた時に、面白い事象が発生しました。自分が発言する時にはミュートを解除することになりますが、マイクはご自身の声だけではなく周囲の環境の音も拾います。
ある学生は、ゲームセンターかパチンコ屋と思われる騒がしい場所で授業を受けていたようです。また別の学生は部屋で友人と一緒にいるらしく、複数の人が大きな声で楽しそうに会話し笑っている声が聞こえてきました。

<ケース2>
テレワークにより通勤のための移動時間が減り、その時間を利用して資格の勉強をする方が増えています。

私は先日、中小企業診断士試験の公開模擬試験の採点を担当させていただいたのですが、答案数は2割以上増えている一方、平均点は昨年を大きく下回っており、またばらつきも小さかったです。問題の難易度の差もあるので一概に比較することはできませんが、答案作成のレベルが下がっているようです。
例えば、今年の受験生の多くが「英数字は1マスに2文字入れる」「行末の句読点は行末のマスの中に入れる」といった本試験の“お作法”ができていませんでした。
他にも、与件文中の同じ情報は複数の設問に使わないのが通例なのですが、同じ内容を複数の設問の回答に使ってしまったことから、答えるべき内容がずれているものも多く見受けられました。

<ケース3>
緊急事態宣言が解除されたことから、久しぶりにオフラインで小学校の授業参観がありました。そこで私が見たのは、自宅学習の時には見たことがないほど授業に集中している自分の子供の顔でした。
これにはさまざまな理由はあるのでしょうが、私が強く感じたのは、同じ目的を共有する人が集まるという“場”の効果です。「学校に行くことは勉強をしに行くこと」「教室は勉強をする場」だと認識し、それ以外のことを考える余地を極力排除することで授業に集中するのだと思いました。まるで、競走馬のブリンカー(脚注参照)のようなイメージですけどね。

オンライン自宅学習する場合は、家という場では、家族は家事をしていたり、小さい兄弟は別のことをしていたりしますから、自分の勉強に集中しにくいようです。また、下の子の勉強は、上の子からは「簡単なことをしている≒遊んでいる」と見えるようで、「私は勉強しているのに弟妹は遊んでいてずるい」という感情が芽生えるようです。そして「ずるい」という感情が頭の中で増幅されて渦を巻き、これがさらに集中を阻害しているように感じています。


次回は、オンラインセミナーの今後について予想してみます。

【競走馬のブリンカー】視界の一部を直接遮ることにより馬の意識を競走や調教に集中させ、周囲からの影響に惑わされずに走らせるために用いられる。

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