BREXITの動向(UK REACH)

英国がEUの貿易圏から正式に離脱したのは昨年(2020年)の1月31日でした。

ところがこの時点ですべてが新しくなったのではなく、新しい貿易協定に合意できたのは、去る12月24日。そして今年(2021年)の1月1日から施行されています。
それに伴い、観光以外の事由での入出国、就労、貿易に関連の事務手続きや関税・税金の扱いなど、多くの変更が決まりました。
昨年末にドーバー海峡トンネルが大渋滞していたニュースをご覧になった方も多いのではないでしょうか。

一般的な内容はニュース記事などに譲るとして、ここでは私の専門である化学物質関連のREACH規則の動向についてお伝えしようと思います。

REACHの概要(EU REACH)

“REACH”は一般の英単語ではなく「化学物質の登録、評価、認可、および制限」の英語の頭文字からなる名称で、EUの化学物質業界の競争力を高めながら、化学物質がもたらす可能性のあるリスクから人間の健康と環境を保護するために採用された規則です。また、動物実験の数を減らすために、物質の危険性評価のための代替方法を促進も図っており、2007年6月1日に施行されました。

REACH規制の概要は以下の通りです。
・EU域内で化学物質(Substance)を1トン/年以上販売する場合は(一部例外はあるものの)登録が必要
・物品(Article)であっても、化学物質の意図的な放出がある場合は登録が必要
・有害性に高い懸念のある物質(SVHC)が含まれている場合は届出や情報伝達が必要

事業者にとって、課題となるポイントは手続きそのものではなく、費用です。
登録するためには化学物質の物性や安全性に関する多くの試験データが必要となります。
販売する量にもよりますが、10トン/年くらいの量を販売しようとした場合、試験費用は1千万円を超えます。
また、動物実験を減らすために既存データの活用が求められていますが、そのデータ購入にも費用がかかります。例えば100トン/年の場合では1億円程度かかることもあります。

従って、EU REACHに登録した事業者がBREXIT後にUKに化学物質を販売する場合に登録がどうなるかというのは、企業にとって大きな課題でした。

UK REACHへの移行

UK REACHの制度そのものは、EU REACHと当面は同じであることは以前から公表されており、またEU REACHの登録データは移行できるとされていましたが、今回その具体的な手続きや期限が示されました

  • GBベースの既存登録者
  • EUベースの登録物を今後も輸入し続ける場合
    1. EUから化学物質を輸入し続ける意向を通知(ダウンストリーム・ユーザー・インポート通知(DUIN))(〆切 2021年10月27日)し、2, 4 あるいは6年以内にUK REACH登録。
    2. 供給者に、GBベースのOR(唯一の代理人)を任命してもらうか、GBで登録されている資源へ変更してもらう。
  • 新規の登録者
    • UK REACHに登録。

全体的に受付期間が短めですが、特に「grandfathering」の〆切が早いので、該当する企業は急ぎ手続きを始めていただきたいです。

雑記

ところで、表記としてUKとGBが入り乱れていますが、これには理由があります。

UKは「The United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland」の略ですが、今回EU離脱となっているのはGreat Britain(GB:England、Wales、Scotlandの3ヵ国)のみであり、Northern Ireland(NI)はEUに留まっています。
従って、北アイルランドで販売する場合は、従来通りEU REACHの規制を受けることになります。

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