Contents

有効塩素濃度が35ppm以上で有効

次亜塩素酸水を人がいる空間の消毒に使うことの危険性について、以前ブログに書かせていただきました。(過去の記事はこちら
ただ、空間ではなく”物品”に対する有効性については、その時点では結論がまだ保留されておりました。

その結論が、2020年6月26日に経済産業省NITE(製品評価技術基盤機構)から発表されました。
この情報を、マスメディアでは「次亜塩素酸水は35ppm以上の濃度で十分な量があれば有効」というニュアンスで伝えているところが多いようです。

吹き掃除の場合は80ppm

確かにNITEの発表内容はその通りです。しかし、今回の評価結果を受けて経済産業省が作成した「新型コロナウイルスに有効な消毒・除菌方法(一覧)」を見るとニュアンスが少々異なり、次亜塩素酸水による物品の消毒が有効なのは、以下のような使い方になっています。

  • 拭き掃除に使うとき
    • 有効塩素濃度80ppm以上
    • 表面をひたひたに濡らして拭き取る
    • 汚れはあらかじめ落としておく
    • 汚れている場合は200ppm以上を推奨
  • 流水で掛け流すとき
    • 有効塩素濃度35ppm以上

一般的な状況では拭き掃除が多く、掛け流して消毒する場面は多くないように思いますから、35ppmではなく80ppmが現実的な濃度かもしれません。

ひたひたに濡らす

またNITEでは「十分な量」という表現が使われていますが、経済産業省の資料では「ひたひたに濡らして拭き取る」としています。

NITEは反応時間20秒で評価しています。ひたひたに濡らして20秒間もおけるのは、家庭の中ではテーブルや食器類、水回り以外に使うのは難しそうです。まして、PCやスマホなどには使えそうもありません。

また、消毒対象物が汚れている場合は、濃度を200ppmまで上げる必要があるとのことですが、これくらいの濃度になると、汚れと反応して発生する塩素の臭いが気になる人もいると思います。

一方、朗報だったのは「次亜塩素酸水の製法による性能差はない」とされたこと。電解法の他、次亜塩素酸ナトリウム水を塩酸やクエン酸などでpH調整したものであっても、有効塩素濃度が確保されていれば、消毒性能に差はないとのこと。次亜塩素酸ナトリウムとさえ区別できれば、安心して使えそうです。

まとめ

新型コロナウイルス感染予防のため、人が触るようなところに霧吹きで次亜塩素酸水を軽く吹き、乾いたウエスで塗り広げながら拭き取っている光景を見かけます。
今回の発表内容からすると、このやり方に除菌効果があるかどうかわかりませんので、要注意です。効果を確実にするためには、少なくとも対象物の表面が濡れる程度まで次亜塩素酸水を吹きつける必要がありそうです。

※空間除菌に関する補足

今回は、空間除菌や手指への使用は評価していないとのこと。
WHOなどは、消毒薬の人のいる空間に噴霧することに懸念を示していますし、厚生労働省も手指の消毒に次亜塩素酸水を使う場合は、電解品を使用した上で、速やかに水で洗い流すように指導しています。

一方で、空間除菌に使われる場合は、メーカーは次亜塩素酸の代替指標として塩素の許容濃度である0.5ppm = 500ppbを基準に用いており、環境濃度がこれを上回らないようにするために、噴霧量をコントロールしたり噴霧駅の濃度を下げたりしていることを根拠に安全性を謳っているようです。

ここで気になるのは、許容濃度は労働安全衛生の観点から定められているものなので、一日8時間・週に40時間の暴露が前提という点です。
ですから、許容濃度に満たないからといって24時間365日吸入し続けても安全とは言いきれませんし、そもそも許容濃度が定められている時点で「有害物質である」と言えます。

6月26日の報道を受けて「次亜塩素酸水は有害だと言っていたから捨てたのに、使っていいのかよ」と憤っている人がいましたが、「有害物質だけど濃度が薄いから害がない(or 少ない)」と「無害である」ということは、区別する必要があると思います。

また空間除菌の有効性についても「昔から実績がある」「新型インフルエンザウイルスには有効」といった記述が多く、新型コロナウイルスに対する試験評価の結果をまだ見つけられていません。個人的には「新型コロナウイルスにも有効である可能性がある(or 高い)」という状況と考えています。

ネット上で出回っている次亜塩素酸水は、製法や成分、有効塩素濃度などが記載されていないものが多いように思います。
次亜塩素酸水を消毒に使う場合は、まず使用目的を明確にし、成分や濃度などをよく調べた上で、目的に合致するものを使う必要がありそうです。