ある日の親子ゲンカの一節。
どうして宿題をやらないの?
妹がYouTubeを見ているのが気になるから。
妹は関係ないでしょ?
だって、妹はYouTubeばかり見ていてずるい。
いつも人のせいにしたり、言い訳ばかり言うのはやめなさい。
どうしてわかってくれないの?わかってくれないなら、この話はもうおしまい。
そう。わかった。なら、あなたとはお話しないから、勝手にしなさい。
よくある親子ゲンカのようですが、お互いに本当の願いを伝えられていません。
親の”表”の願い
- 言い訳ばかりしていないで、前向きに考えるような子になってほしい
- 早く宿題を終わらせればYouTubeを見られることを気付いてほしい など
子の”表”の願い
- 怒られたくない
- 今は宿題よりもYouTubeを見たい など
お互いにその願いは伝わらず、どちらにとっても悲しい結果となりましたが、よく見ると、会話の中にはお互いの願いを伝える言葉が出てきていません。そして、どちらもそのことに気が付いていません。(その後、ちゃんと仲直りしています)
でも実は、本人たちが意識していない、裏の願いもあるのです。これが話を複雑にします。
親の”裏”の願い
- 私の時間をこれ以上取らないで
- 私のいう事を聞きなさい
子の”裏”の願い
- 妹ばかりではなく、ボクも見てほしい
- 自分の悪さを認めたら、お母さんはボクをきらいになる
これらの「裏の願い」は、実はコミュニケーションの態度や表情に現れてくることに、気づいている方は少ないようです。
以前にもご紹介しましたが、「メラビアンの法則」によると、言葉と声のトーンと態度という3つの要素から発せられるメッセージが異なる場合は、言葉”以外”の要素が主に伝わります。
つまり、前述の親子は、以下のような会話をしていたという事になります。
私のいう事を聞きなさい (怒)
妹だけでなく、ボクをもっと見て (怒)
話が噛み合っていないですよね。そして、相手に伝わるのは”怒り”だけです。
これでは、いくら言葉を交わしても、お互いの本当の願いを伝えることは難しそうです。
また、「コミュニケーションの三要素」が異なるメッセージを発していることから、相手には不快感も生まれます。
伝わっていない感覚が怒りを生み、言葉が攻撃的になることでお互いが心に傷を負う。ケンカという非常にエネルギーを使うコミュニケーションをしても分かり合えない、という悲しい結末に至ります。
では、どうすればよいのでしょう。
伝え方のテクニックでカバーできる面もあるかもしれませんが、言葉と声のトーンと態度がバラバラでは、いつまで経っても相手に真意が伝わらないと思います。
また、相手の言ったことに反射的に反応して言葉を返しているだけだと、思ってもいない方向に話が流れていきます。
そうならないためには、
- 相手が何を感じ、何を考え、何を伝えようとしているのか。
- 自分は何を感じ、何を考え、何を伝えようとしているのか。
- 自分に沸き起こってきた考えや感情は、何からもたらされたのか。
など、相手のことを感じる力と、自分の内面の動きを自覚する力が必要だと思います。
それには、ワークショップや瞑想などが、一助になります。
ここら辺のお話は、また後日。
でも、最も難しいと思うのは、同じ空間でその状況の中にいる「私」がどう関わるかです。実は「私」もその場を創りだしている要因の一つです。「関係ない」「早く終わらないかな」などと無関係を装ったり、「全くあいつらは」「こうすればいいのに」などと評論家的に傍観しているかもしれません。”関わらない”という選択肢ですね。
でも、状況を変えたいと思っているのなら、思い切って”ケンカしている二人の世界に割って入る”という選択肢もあります。
とはいっても、「まぁまぁ、ここは穏便に」などと単に仲裁に入るだけでは状況を変えることは難しいです。どちらかの味方にならざるを得なくなったり、いつの間にかケンカのサイクルに巻き込まれたりします。
その場の”怒り”のエネルギーの直撃を受けないようにすることが肝要です。
ちなみに最近の私の経験では、1) 空気を読まずに、すぐ横で馬鹿笑い、2) わざと何かをやらかす(お水をこぼす、足の小指を家具の角に引っ掛ける、など) と、高い確率で親子ゲンカが収まります。
その代わり、自分が怒られたり痛かったりしますけどね。(笑)