2019年2月25日(月)に行田市商工センターで行われた田中先生の講演を拝聴しました。おおよそ100名以上の方が参加しており、盛況でした。
内容は、安全衛生、特に化学物質による職業疾病の原因究明、保護具の性能といったこれまでの研究成果、日本の経皮暴露への関心についての警告などのお話がありました。

個人的に印象に残った内容は以下の通りです。

  1. 保護具の破過に関する、事業者の認識の甘さ。例えば有害ガスなどを吸収する吸収缶の性能が、主に使用する化学物質や湿度に大きく影響することすら認識されていない。また、手袋などの材質によっては、化学物質が浸透することで、外観上は破損がないにもかかわらず暴露する可能性がある。(化学を専攻したものであれば、想像できるような気がします)
  2. 製品の性能は素材の性能だけではなく、加工方法でも変わる(手袋や長靴に接合部がある場合は、素材より先に接着部や接合部ダメになることもある)
  3. 一部の海外メーカーのSDS(安全データシート)には、推奨する保護具と、その保護具を用いた場合の破過時間などを記載されているものがある。(国内外で安全やリスクに対する意識が違う)
  4. 複数の化学物質を取り扱う場合、単一の材質では対処できない。複層フィルム技術の進展に期待。
  5. 厚労省から、事業者が適切な保護手袋の選定や作業者への啓蒙指導を行う必要があるとの通達がなされていること。(=事業者は、適切な保護具を選定する能力が必要となる。また、せっかくの防護保護具も、きちんと着用していなければ役に立たない。防毒マスクからの漏えい率は、啓蒙指導により大きく改善する。
  6. 体に合った保護具が選定できるようになっている。例えば防毒マスクは、私が労働安全を担当していた5年ほど前は大小2種くらいしか選択肢がなかったが、今では6種をラインアップしている会社もある。
  7. 工場作業者に対するばく露研究はそれなりに進んでいるものの、研究者に対する研究が進んでいない。(研究者自身の認識遅れ、従業者の絶対数が少ない、など)

講義の最後には花束贈呈や記念撮影があるなど、終始、和やかな雰囲気で終わりました。
個人的には、田中先生の退職後、こういった研究が国内で続けられるのか不安に感じました。 自分にできることはなんだろう。少し考えます