日本テレワーク協会によると、テレワークとは、情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことであるとされています。

またその形態も、(1)在宅勤務、(2)モバイルワーク、(3)サテライトオフィスの3つになります。

「テレワーク」は、最近発生した新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言によりにわかに脚光を浴びていますが、モバイルワークは営業マンなどではかなり以前から一般化しており、実はそれほど目新しいものではありません。
それなのに、在宅勤務となったとたんに、「サボっていないか監視するシステムが必要」「人事評価のやり方がわからない」といったことが課題として噴出してきます。
そういう意味で、今テレワークを進めたいのは営業部門ではなく、これまでは外で仕事することがほとんどなかった事務部門やシステム開発部門が多いように思います。

では、これからテレワークを始めたい企業は、どうやって進めたらいいのでしょうか。

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1.制度作り

貴社がモバイルワークなどの経験や実績がある場合はともかく、これから始める場合は、テレワークの規定やセキュリティーポリシーなどのルールを定めておく必要があります。
ただし、起こりうる可能性を洗い出して対応を決めていくのでは時間ばかりかかってしまい、いつもまでも実行フェースに移れません。
最初に決めるのは、対象者を決める方法、始業・終業の考え方、連絡の方法、経費や交通費の清算、やってはいけないことなど、最低限の内容にとどめ、細かい事項は実際に不具合が顕在化した段階で決めればいいと思います。
人事評価もよく問題になりますが、営業部門の評価のやり方について記された本は数多くあることから、参考にしていただければと思います。

監視システム導入については、社員が「会社は社員を信用していません」というメッセージとして受け止める可能性がありますので、相応の理由がない限り、私個人としてはあまり賛成ではありません。

2.業務見直し

担当者が、ごく一部であっても「会社にいないとできない仕事」を持っている場合、その人はいつまでたってもテレワークを行うことができません。
業務分担を見直して会社にいないとできない仕事を一人に集めたり、ペーパーレス化をしてファイリング作業をなくしたりするなど、業務を見直すことが必要です。

また、会社に来る人が固定されると不公平になりますし、万一の際の代替が難しくなります。業務見直しと併せて、見える化・標準化を進めていただきたいです。

3.環境整備

社内ネットワーク内に共有サーバーや基幹システムがあったり、給与計算や会計といった専用業務システムが社内のパソコンで稼働していることがあると思います。
社外で業務を行うためには、社外からこれらの情報やシステムにアクセスする必要があります
ここでよく使われるのが、VPN(バーチャル・プライベート・ネットワーク)とリモートデスクトップ、バーチャルデスクトップといったIT技術です。
また、会社でデスクトップパソコンを使用している場合は、持ち歩いたり自宅で仕事ができるようにノートパソコンやタブレット型端末を準備する必要がありますし、社外や自宅でネットワークにつながるためのモバイルWi-Fi端末や無線LANルーターが必要です。

電話を必要とする業務は、携帯電話や会社にかかってきた電話を社外に転送するサービスやシステムを使う必要があります。

これらのほかにも、コミュニケーションや情報共有のためにチャットツールやグループウェアを導入しているところが多いようです。

インフラ整備のために補助金・助成金を検討されている企業様が多いようですが、パソコンの導入には価格(1台10万円未満が多い)や台数などが制限されていることが多いので、公募要領などをよく確認していただければと思います。

4.意識変革

意思決定者が抵抗勢力となっていては、いつまでたってもテレワークの導入は進みません。経営者や管理監督者だけではく、場合によって作業者本人にも意識を変えていただく必要があります。

でも、言葉を尽くしてロジカルに説明しても、なかなか理解が得られないようです。
一方、スモールスタートでもいいので一度でも経験すると、案外スムーズに進むことが多いように思います。
今から導入を進めている方も、まずは「小さくやってみる」ことから始めてはいかがでしょうか。1人で1日だけといったトライアルであれば、経営者もOKを出しやすそうです。

5.マネジメント

労働基準法や労働安全衛生法に対応するため、労働時間や残業時間、深夜残業の有無などは会社として把握する必要があります。また、離れたところにいる部下の業務進捗管理や負荷管理などを行うために、日報を強化したり、勤怠管理や業務管理システムを導入している企業が多いようです。

また、意外とコミュニケーションのスキルが労使双方に求められます。

例えば、対面のコミュニケーションと比べると、文字や音声、顔だけの画像といったICT技術を使ったコミュニケーションでは、非言語の情報が少なくなります。
対面のコミュニケーションでは「きつい言葉だけど悪気はない」「言葉は穏やかだけど、相当怒っている」といったことが伝わりやすいのですが、「きつい言葉」「穏やかな言葉」だけが相手に強く伝わり、言外の情報が伝わりにくいようです。

また、人数の多いWEB会議では、少し話の流れを折ってでも発言しないと、何も言えずに終わってしまいそうです。

テレワーク導入というと、ハードウェアやインフラ環境を整備すればできるような印象がありますが、社内のコミュニケーションは社風に負う部分もありますので、慣れるまでには少し時間がかかるかもしれません。