先日、「残業代減で喜ぶ経営者は愚かだ」という、カルビーの代表取締役会長兼CEOである松本晃さんのコラムが日経新聞に載った。
働き方改革という言葉が飛び交っているが、私が経営者の方のお話を聞く限り、「残業代を削減したい」か「残業時間を削減したい」ということはよくお聞きするので、そういった方々にとっては刺激的なタイトルだと思われる。

じゃあ従業員は今のままでいいのかというお考えかというと、そうではない。経営者は効率良く働ける環境や制度を作り、従業員は生産性を上げて短時間で成果を出せるようにする。そして、残業代が減って浮いたお金は成果を出した社員で分配するという。これは、成果を出せなかった社員は残業代が減っただけ所得が減ることになるということだ。

また、空いた時間の使い方も問われると思う。ビジネススクールでスキルアップ、フィットネスジムなどで健康増進、家族や友人との時間の充実、そしてゲーム三昧。どれを選んだか(積極的/消極的/無意識を含む)によって、その人の立ち位置は数年後で大きく変わってしまっているだろう。

でもこれは「自己責任」という一言で片づけてはいけない問題と思う。世代やキャリアの差はあるが、日本では「あなたは何者か」という問いを受けたことがある人は少ないのではないだろうか。
社会人の方であれば「●●会社営業課の××です」と答える人が多いように思う。でも、これは会社との従属関係を示しているだけだと思う。

でも、もしアメリカの人が同じように質問を受けたらきっと次のように答えると思う。「私の名前は××だ。セールスの仕事をしており、その仕事に誇りを持っている。今所属しているのは●●会社だ」と。

私は小学校の1~2年生の時に父親の仕事の都合でアメリカに行き、現地の小学校に入学した。その時に「あなたのアイデンティティは何か」と問われ、答えに窮した記憶がある。同級生たちは皆、「私はこういう人だ。こういう思いを持っている。こんなことがやりたい。こんなことが好きだ」などと、すらすら出てくる。ようやく「私は日本人だ」と答えたら、「ニンジャはまだいるのか。カタナは持っているか」など矢継ぎ早に問われ、何も答えられずに撃沈した。その時の周囲の「なーんだ」というちょっとがっかりしたような空気感もうっすらと覚えている。

 

先日、(一社)アイアイ・アソシエイツの理事長である堤久美子さんのお話をうかがう機会があった。アイアイ・アソシエイツは「120万人の個の発展」を掲げて活動している。また「自分らしさ」「誰もがその人としての天才である」「自分の可能性に気付く」というキーワードは、「自分は何者か」ということを自分が理解することを手助けするのだと思う。

HiAcのキャリアビルディングも、今年最初の講座が始まる。近々、今度は「オーセンティック・リーダーシップ」について学ぶ機会もある。このような知見・経験を生かし、今後も個人が自立するお手伝いをしていきたい。それが働き方改革の一助にもなればと思う。